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人生はジョークだとずっと思ってきました。Althearさん。Kuuさん、tktkさん、文法に関する助言をありがとうございまし た。
ジョークにしては長すぎるし、笑えないと思う人もいます。オチよりも途中のほうが面白いなんて、なんて後ろ向きなジョークだろうと思う人もいます。たとえ ば私たちの先祖は猿ですが、その昔は魚で、さらに太古には単細胞生物でした。
「なぁ、アール。あの上司が憎らしいよ。単細胞みたいじゃないか。」
「よせよ、フランク。俺のご先祖は単細胞だぞ。」
ジョークはただの笑いというよりも痛快さをもたらすことがあります。
私たちが暮らしている世界では、工場生産されたアイドルたちが人気ランキングで一位になろうとして、(あるいは身の丈にあわない地位を得ようとして)自家用ジェットで飛び回っている一方で、真に魅力的で誠実な人たちが地面に貼りついた空き缶をはがさなければいけません。
気持ちが滅入る事例もあります。畑でこつこつと働く有色人種の労働者が大勢いますが、その畑で生産される作物は彼らの生涯賃金よりも高く売れるのです。
ジョークはさまざまな物事の構造をなぞりながら、人生は厳しく不公平で、そのことを変えたくてもなにも手立てがないという事実に向き合うための方法です。誰もチョコレートを食べるのをやめる気にはならないだろうし、実際やめたりはしません。ひとびとは搾取工場で作られた服を着たまま、ブラッド・ダイアモンド(訳注:別 名、紛争ダイアモンド。ダイアモンド産業が紛争と殺人と強制労働、違法な武器購入の資金源の温床になっている地域があります。)をプロポーズで差し出し、 飛び降り自殺者の山を築いているIT産業の生み出したパソコンで結婚のお知らせを書きます。けれどそういう私たちは、救うに値する人たちを救えるだけの給料を得ているのです。
とはいえ皮肉屋でさえ虚無主義の中へは逃げ込めません。というのも、人生というジョークはゆるやかではありますが確実に、情報と技術の力を使って、よりよいものへ変化しているからです。どんなひとでも社会の不健全な点を世間に広められるようになったのは最初の一歩であり、まぎれもない事実です。とあるレポーターがカカオ豆栽培の労働者にチョコレートを手渡し、その日を彼の人生で最高の一日にしたのも事実です。
最悪の側面もあります。彼が再びチョコレートを味わう機会はもうないでしょう。単細胞が人類に進化したように、進化は気の遠くなるような年月の中で起こ り、人生というジョークは人が産まれた時から始まります。絶対に終わらないかもしれない戦いで理想主義は優位に立っています。だって現実なんて辛すぎて泣けないでしょう。だからこそ、私たちは笑うのです。
InterestingNPCの登場人物のなかで、ルマーリンは自身の存在と行動の理由、考え方を一番自覚しているキャラクターです。人生はジョークであると理解し、人生の恐ろしく、気の滅入る、不公平な側面をあまりまじめに受け取らないようにしています。こうした考え方が彼を気弱にして、立ち位置を決め るのを恐れさせています。自分だけが楽しければいいとか面白ければそれでいいという考え方は、無関心に繋がることだってあります。
けれど笑いはどうしたって必要です。後味の悪い決断をしたあとには毒消しになります。すべてが思い通りにはなるわけではないと思い出させてくれます。理不尽な結末をかかえて生きていくためには、人生はすべてジョークだと納得するしかありません。腹が痛くなるまで笑い、腹が痛くなってしまったと笑う。人から笑いを奪うなんて誰にもできません。
だからルマーリンはプレイヤーに決断を任せます。あなたが内戦でどちらの側につこうと、ドラゴンを殺そうと、いずれにせよ破滅が待っている今の世界を救おうと、ルマーリンは肩をすくめて微笑みながら賛同します。ルマーリンは自分がどうなるかなんて気にしません。彼の役割はあなたがどんな決断をしても支えることです。善だろうと悪だろうと、悲劇だろうと、どんな決断をしても結局我々は単細胞に過ぎないのだと思い出させることが彼の役目なのです。